随分時間が経ってしまいましたが、先日、アムステルフェーンの囲碁会館で行われた、「かもめの会」の「子どもの教育と幸福」をテーマとした講演会に行って参りました。

かもめの会」とは国際結婚を考える会会員である日本人の方がオランダに渡って発足させた会だそうで、この講演会へ向けて毎月行われた”日本からご家族でオランダに移住された方たち”座談会のゲストとして私と妻をお招き頂いた経緯もあり、オランダで子育てをすると決めた親としても非常に興味深いテーマであるので参加させて頂いたというわけです。

このテーマの主旨としては、ユニセフの2013年のレポートに基づいた、オランダは「世界一子供が幸せな国」という調査結果を受け、日本のメディアやインターネットでの個人発信などの影響等もあり、近年オランダに移住する日本人家族が増えていることを踏まえ、果たしてオランダは本当に子供が世界一幸せなのか?、本当に日本人が認識しているオランダの環境や教育は子供達にとって幸福なものなのか?それが日本人にとっても当てはまるのか?等を考えるというコンセプトでした。

僕らも移住を決めた当初は、日本の古今あまり変わらない教育に疑問を感じたことが一つの要因でもあり、「一大決心で移住するのだからオランダの教育は最高であって欲しい!」というバイアスもかかって、オランダの、特に教育面での良いところばかりに目が行きがちだったのですが、落ち着いて暮らす様になり、オランダ人との交流も増えて来ると、移住当初とはまた違ったオランダの現状や側面が見えて来て、手放しに良いところばかりではないということに気付いて来たのです。

オランダの現地校に2年以上通っている娘達の将来の進路のことも踏まえ、実際にオランダで子育てを終えた、もしくは子育てに関わる方々の経験は大変貴重なもので、非常に楽しみでした。

在オランダ歴10数年~40数年の方々やオランダで教育に従事されていらっしゃる方まで、ゲストスピーカーの方々が約2時間半次々に「子供の教育と幸福」をテーマに、それぞれの角度でお話しして下さいました。

会場には30~40名程の方がいらしており、大半がかもめの会に関係する国際結婚をされてオランダに住まわれている女性の方々の様にお見受けしたのですが、講演自体が終わった時に、我々のような環境移住をされた方々や、教育に力を入れる為来られた、いわゆる教育移住という形でオランダに移り住まれた日本人家族の皆さんにも、この内容を共有したい!と強く思ったのでした。

ブログ掲載にあたり、もちろん主催の方々、スピーカーの方々に了承を得、監修頂いたのですが、インターネットの台頭などで無責任且つ不正確な情報発信が独り歩きし、信頼できるものとそうでないものの見分けがどんどん難しくなり、何を信じるにもすべてが自己責任、というような風潮を懸念されているということも大いに共感でき、私自身も発信する側として責任を持ちつつ、主観もあり、受け取る側の捉え方によってもその真意は変わってしまうということを踏まえた上でですが、そういった移住ブーム?への懸念がオランダ内でもあるという事と、実際にオランダで子育てをしたり、子どもたちと深く関わる先輩方の意見を少しでも広める事が大切な気がして、今回ブログにも書かせて頂くことにもしたという訳です。

 

オランダ在住歴46年で3人の娘さん達は40代&お孫さんも7人いらっしゃるMさん、翻訳家でもあるオランダ在住歴16年のYさん、オランダ在住歴32年のSさん、オランダ在住歴25年以上で、日本とオランダ双方の教育機関で教育に携わっていらっしゃる御方の4名の講演を伺いました。

Mさんの冒頭の「最近オランダの教育がいいと日本から移住者が増えているそうなのですが、信じられない!日本の教育の方がいいに決まっているじゃない!と思っていたんだけど、現に日本の教育に疑問を感じてオランダに移り住む日本人が出て来たということが非常に興味深い。」という様な発言が個人的に印象的で、講演後にMさんとお話しさせて頂いた時に「あなたの様な日本人が現れたということが、とにかくすごい!」と仰って下さったことを勝手ながら大変嬉しく感じたと共に、世界の変化のスピードは更に加速し、数年後には現在では想像出来ない考えが生まれている可能性も高いなあと思いました。

Mさんはユニセフの「先進国における子どもの幸福度」の日本との比較レポートを丁寧に解説して下さって、それによると、あらゆる項目で上位の結果を残しているということで、先進31カ国中確かにオランダは1位なのですが、教育の分野においては実は日本が1位(オランダは2位)を獲得しており、平均的学力の面から言えば、日本はトップクラスということが数字面からうかがい知ることも出来たり、(2013年時点の数字ですが。)そもそもその後、毎年のように発行されるレポートで調査事項、使える統計も変わっており、各国の取り組みなどもあって変動があり、順位そのものは大まかに捉えるべきで、一喜一憂するものではないという見解などをご説明いただきました。

続くYさんは、ご自身が翻訳された「世界一幸せな子どもに親がしていること」という本の著者との対談でリアルに聞いた意見や、我々も呼んで頂いた座談会などから吸い上げた情報を上手くまとめて下さり、「子どもにとって重要なことは、親が子供の先回りをして助けるのではなく、子供を信頼して成功も失敗も自分で背負わせ、責任を持たせることで、子どもはその信頼に応えようとする。」という言葉が非常に印象的でした。

都心から遠く離れた田舎町で暮らすSさんは、現在24歳になる娘さんのリアルな進路について話して下さり、17歳まで特に何の問題もなく、小学校の時はクラスでもかなり大人し存在だった娘さんが、芸術系の大学に通う為、都会で一人暮らしを始めたのをきっかけに、2年になった頃にはほとんど学校に行かなくなり、それからほとんど娘さんの状況が知らされることもなく、その大学を退学になってしまい、紹介された職業訓練学校も無断欠席の多さからまた退学になり、次に紹介された学校を退学になるといよいよ行く所がなくなるという土壇場で一念発起し、なんとか1年でその学校を卒業し、次の学校で大学入学資格に合格するまで復活したという赤裸々な話から、オランダのやり直しの文化を垣間知ることが出来ました。

オランダでは18歳で成人ということですが、Sさんとしては、親として一人暮らしを始めた娘の担任の先生から、娘の学校での状況について(仮進級になる可能性がある、授業についていけない等)連絡が欲しかったというのが正直なところで、親としての権利が子供が18歳になると同時に奪われたような気持ちだったそうです。

我々含め、近年子供が小さいうちに移住して来た日本人の親御さん達へは、個人的にですが、確かにオランダの小学校は日本と比べ自由で子供達が伸び伸びと育つというのは事実だと思いますが、それが中学高校となると(言葉の面も含め)それまでとは違ってくるということと、その反面、何度もやり直しができたのはオランダだったからに違いないということを知って頂けたらという想いを込めてお話し下さいました。

最後は現在日本とオランダ双方の教育機関で教育に携わっておられる方からお話し頂き、このブログの掲載にあたり直接文章を校正頂いた内容がこちらです。

「オランダの子どもたちが幸せだとされる理由の考察として、時代による変化は多少ありながらも、学校や家庭で教師や親がそれぞれの子の適性を重視し、その子に合わない方向性を無理強いしない傾向にあること。

また、生活面における教育(しつけ)は伝統的に家庭の役割と考えられており、多くの家庭では両親が(同居していない場合も含め)子どもの教育に責任を持って参画していること、家庭と学校の役割が仕分けされそれぞれ担われる中で、子どもたちは必要なルールやふるまいを学び、社会の一構成員としての素養を身に着けていくこと。

他者に対して寛容・親切で、自分ができる範囲での援助も惜しまず進んで行う姿勢を親や他の人々を通して知り、また、学校の活動等を通じ自ら体験することなどから、皆にとって有益な社会を作り維持することが結果的に自分たちの幸せにつながることを理解していくことも関連しているのではないか。」

とのことでした。

私自身の文章力や理解力が乏しく、スピーカーの皆さんの意図するメッセージを100%的確に捉えきれていないかもしれないという点は充分考慮した上で、やはり私には「オランダは素晴らしい」というバイアスがまだまだかかっているのか(笑)現在の日本とはあらゆる所で相違しているオランダに環境を移したことは、自分達にとってやはり最良の選択だったと確信している次第です。

しかし、中学からどういう選択肢があるのか?また、言語の問題がどれほど影響してくるのかは、まだまだ未知数であると共に、純粋な日本人の子供達がオランダで大人になっていくという過程のデータはまだまだ希少で、近年移住して来た我々や同子育て世代の方々とその子供達がその道を創っていくのだという意識を強く持ったのも事実であります。

序盤にも書かせて頂きましたが、あくまで私の主観であり、会場にいた方の中には、全く違った解釈をされた方もいるかもしれません。
先輩方の意見を広める為と言いながら、受け手によってその捉え方は千差万別となるかもしれませんが、今回はこういった試み自体があったことが広まればこの上ないです。


カテゴリー: オランダの教育

Tomo Murakami

英語できない、手に職もない村上家の主、4姉妹のパパが2016年10月末より無謀にもオランダに家族で移住し、2018年4月オランダで5人目の女の子が生まれた奮闘記録第二章

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